Column 地域幸福度(Well-Being)指標を起点にした共創の可能性を語る

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地域幸福度(Well-Being)指標を起点にした共創の可能性を語る

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地域幸福度(Well-Being)指標を起点にした共創の可能性を語る

木村篤信、中本雄太郎、満恵川翔平がSCI-Japan正会員交流イベントに登壇

2025年5月20日(火)、日経カンファレンスルームにて開催された(一社)スマートシティ・インスティテュート(SCI-Japan)主催の「正会員交流イベント」において、株式会社地域創生Coデザイン研究所(NTT西日本グループ) より木村篤信(ポリフォニックパートナー)、中本雄太郎、満恵川翔平(いずれもリードCoクリエイター)が登壇し、「地域幸福度(Well-Being)指標を活用した民間企業による事業展開の可能性」をテーマにトークセッションを行いました。
 
本セッションは、SCI-Japanが推進するOASIS(人材育成プログラム)修了生の成果共有として企画され、民間・自治体・政府それぞれの立場から、地域幸福度指標の利活用に向けた挑戦と展望が語られました。
 

<Well-Being指標とは?>
Well-Being(地域幸福度)指標とは、客観指標(オープンデータによる客観データ)と主観指標(アンケートによる主観データ)をバランスよく活用し、市民の「暮らしやすさ」と「幸福感(Well-being)」を数値化・可視化したものです。市民一人ひとりが「デジタル化・スマート化は自分にとってどういう意味があるか」を理解するためにも、デジタル化・スマート化に伴う心豊かな暮らしの変化を可視化することをめざしています。
また、デジタル田園都市国家構想では、めざす「心ゆたかな暮らし」(Well-Being)と「持続可能な環境・社会・経済」(Sustainability)の実現に向けた取り組みにおいて、行政だけでなく産官学、市民を含めたさまざまなプレイヤーの協力を引き出すツールとして活用されています。
 
参考URL:https://well-being.digital.go.jp/

リビングラボ×Well-Being指標でつくる、共創のしくみと実践(Coデザイン研究所)

冒頭では、国内リビングラボの研究・実践を先導してきた木村篤信が、「指標の活用はゴールではなく、地域の対話を生み出すプロセス」と位置付け、次のように語りました。
 
「Well-Being指標を導入することが“データに基づいた意思決定”のきっかけになる一方で、重要なのはその“使い方”。我々は単なる指標の導入支援ではなく、住民参加や企業連携を促す設計を通じて、共創の生態系(エコシステム)を地域に埋め込むことをめざしています」
 
中本雄太郎は、複数自治体における政策設計支援の経験をふまえ、「数値化だけでは住民の感情や納得感を捉えきれない」と強調。アンケート・人流・購買データなどの融合や、デジタル対話の場づくりに取り組む背景を共有しました。
 
「例えば、阿蘇市では観光と生活のバランスが課題です。そこにWell-Beingの視点を持ち込むことで、住民にとっての“豊かさ”を再定義し、行政施策と民間サービスの方向性を一致させることが可能になってきました」
 
満恵川翔平は、奈良県三郷町の総合計画策定支援を例に挙げ、「Well-Being指標は、行政計画を“住民の主観に根ざしたもの”へと転換する鍵」と語りました。
 
「単にKPIを並べるのではなく、住民アンケートで見えてきた“暮らしの質”に関する実感を、まちの将来像に接続しました。 指標を通じて、住民と行政が同じ言葉で未来を語れるようになることが重要です」と、計画策定と幸福度データの統合的運用の可能性に言及しました。

データを「使える」形で整える、行政視点からの実践(菊川市役所)

前デジタル庁、現・静岡県菊川市役所の鈴木ミユキ氏は、行政実務者の視点から、指標活用の現場感を語りました。
 
「庁内での合意形成において、定量と定性の両輪が必要。Coデザイン研究所のような伴走型支援があることで、庁内で“やってみよう”が生まれました。最初は手探りでも、外部との共創によって、政策が動き出す実感が得られました」
 
同市では現在、地域幸福度指標を活用した教育・福祉・まちづくり分野での実証が進んでおり、データ連携や住民意見の可視化が政策に反映されるプロセスが着実に構築されているとのことです。

政策と産業の共通言語としての指標活用(デジタル庁/TIS)

デジタル庁およびTISの立場で登壇した多田功氏は、民間企業と行政の共創促進に向け、指標を“インターフェース”として捉える重要性を指摘。
 
「Well-Being指標は、事業と政策をつなぐ“翻訳装置”になり得る。民間企業が地域の課題に寄り添いながら、行政と共にソリューションを生み出す仕組みをつくる上で、非常に有効です」
 
今後は、国レベルでのガイドライン整備に加え、地域単位での実装ノウハウを持つ民間の知見が不可欠になると述べました。

地域の「幸せづくり」を担うエコシステムへ

モデレーターを務めたSCI-Japan代表理事・南雲岳彦氏は、総括として次のように述べました。
 
「日本各地で指標を使った地域変革の実践が進みつつある中で、今日の議論は“民間と行政の共創”がいかに現実的になってきているかを示すものでした。今後はこれらの知見を横展開することがSCI-Japanの役割です」

指標を「共創の起点」へ

本イベントを通じ、地域幸福度(Well-Being)という抽象的な価値を、政策・サービス・人材育成へと具体化するプロセスの重要性が改めて認識されました。今後も、地域社会の多様なプレイヤーとともに、指標を「共創の起点」として活用できる仕組みを広げていきます。
 
 
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