へき地等における効率的な医療提供体制の確保に向けた
セミナー・展示会を開催(福井県)
北陸 福井県
福井県における医療MaaS実証実験開始に向けた準備活動の一環として、 医療MaaS車両展示会・遠隔医療セミナーを開催しました
地域創生Coデザイン研究所では、医療MaaS実証事業を通して、地域医療課題解決や持続可能な医療サービスの提供に向けた取り組みを進めています。前回は福井県における次年度の医療MaaS実証実験地域の選定に向けた「第1回医療MaaS導入検討会」の開催についてご報告させていただきました。今回はその続編として医療MaaS車両展示会兼遠隔医療セミナーを開催しましたので、ご報告します。
■関連コラム
・<第1弾>へき地等における効率的な医療提供体制の確保に向けた検討会を開催(福井県)
https://codips.jp/reports/20250925/
福井県では、へき地における医療アクセスの確保と、医師の負担軽減による効率的な医療提供体制の構築をめざし、嶺南地区をモデルに医療MaaS導入の検討を進めています。
現在、人口減少が進む嶺南地域(敦賀市・美浜町・若狭町・小浜市・おおい町・高浜町)のへき地では、公立小浜病院による巡回診療が行われています。しかし、医師が現地に赴く際には長時間の移動が必要で、働き方改革の影響もあり、負担が大きい状況です。このため、病院での診療とへき地医療を両立できる、より効率的な仕組みが求められています。
こうした課題解決に向け、次年度には医療MaaSを活用した実証実験を予定しています。この取り組みは、「医師の移動負担を減らし、診療時間を確保する」ことに加え、「地域住民が安心して医療を受けられる体制を維持する」ことを狙いとしています。今回、その準備の一環として、他地域で既に実装されている医療MaaS車両の見学や、実際に活用している医師・行政担当者との意見交換を通じ、地域医療に携わる関係者の方々に具体的なイメージを持っていただくための展示会兼セミナーを開催しました。
今回、様々な方に医療MaaSを活用したオンライン診療に具体的なイメージを持っていただくために市立敦賀病院でのイベント「健康応援フェスタ2025」を活用した医療MaaS車両の展示会や、小浜市・敦賀市でそれぞれ開催した「医療MaaS車両展示会・遠隔医療セミナー」の企画運営に携わりました。展示会では、実際に運用中の車両をご覧いただく機会を提供しました。また、遠隔医療セミナーでは、既に他県で医療MaaSを導入している自治体職員や医師にご登壇いただき、それぞれの立場から医療MaaSを活用した地域医療課題へのアプローチや実践例について講演を行っていただきました。本会は、へき地医療従事者をはじめとする医療機関、介護支援事業所、市町村医療担当課等、多くの関係者にご参加いただき、好評を博しました。地域医療の在り方について検討し、意識向上を図る有意義な場となりました。
引き続き福井県のへき地等での医療提供体制の整備に向けて取り組みを推進してまいります。
【写真1】市立敦賀病院 健康応援フェスタ2025模様
【写真2】展示会兼遠隔医療セミナー模様(小浜会場)
【写真3】展示会兼遠隔医療セミナー模様(敦賀会場)
最後に、展示会兼セミナーを開催するにあたり、嶺南地区内のへき地巡回診療をされているドクターへ本地域の医療課題に係るヒアリングをさせて頂きました。そのなかで特に印象的だった内容をご紹介させていただきます。
『敦賀市のへき地診療所は、かつて地域医療を支える拠点でしたが、今では患者数の減少が深刻です。とある診療所では週2回の診療でも来院はほとんどなく、別の診療所ではここ3年患者がいません。その背景には診療所の設備縮小や高齢化・施設入所、若年層の中心部流出などがあります。町なかまでは車で10〜15分と近いものの、中心部の病院では2〜3時間待ちが当たり前で、高齢者には大きな負担です。それに加えて町なかの病院だと周りは知らない人ばかりで長時間待つことがつらいため、簡単な疾患である患者さんが診療に来ることがあります。 一方、へき地診療所では顔なじみの安心感があり、待ち時間も苦にならないといいます。こうした「診療所がある」という存在自体が地域の安心につながっており、過去に閉鎖を検討した際には強い反対の声が上がりました。医師の高齢化・後継者確保など他にも課題があり、将来どうなっていくのか不安です。』
私たちは、診療所の現状を「守るか、なくすか」という二択で語るのではなく、地域の安心を守りながら、持続可能な医療の形をともに描く伴走者でありたいと考えています。ヒアリングで伺った声を出発点に、地域の思いと実情を丁寧に受け止め、そこに寄り添った解決策を形にすることを大切にしていきながら、実証と対話を積み重ね、現実的で納得感のある仕組みをともに育てていきます。これからも、地域の方々と歩みをそろえながら、「安心」と「医療の質」を両立させる未来を築いていきます。
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