留学生が福井の魅力を再発見~大阪観光大学学生 たけふ菊人形まつり・三國湊エリアモニターツアーレポート~
北陸 福井県

株式会社地域創生 Co デザイン研究所では、 観光庁の支援を受け、福井県内3エリアにおける新たな観光コンテンツの創出を目的としたモニターツアーを開催しております。 今回は、大阪観光大学の留学生の皆さまにご参加いただき、地域資源の魅力を体験いただくツアーを実施した内容をレポートしました。
2024年3月に北陸新幹線金沢―敦賀間が開業し、福井県への来訪者は前年比30%増となりました。(※1)
しかしそのほとんどが国内からの来県者であり、観光庁の調査によると、2023年、2024年の福井県への外国人観光客数は全国で3番目に少ない状況です。(※2)
そこで今回は、外国人の視点を活かした新しいアイデアの創出や、国外への福井県の魅力発信のため、以下2つのコンテンツを留学生の皆さまに体験いただきました。
※1:福井県観光連盟 FTAS調べ
※2:国土交通省観光庁「インバウンド消費動向調査(旧 訪日外国人消費動向調査)「2024年間集計表」,「2023年年間集計表」」(2025/10/15)
(1)福井県越前市
~たけふ菊人形まつり、越前和紙にふれる~
ツアー前半は、越前市の武生中央公園で10月~11月にかけて開かれる全国最大規模の菊の祭典 「たけふ菊人形」で菊人形のガイドツアー、越前和紙を使ったオリジナル小物づくり、総勢600名からのメッセージで菊の花を完成させる「越前和紙で大きな菊を作ろう」を体験しました。
「たけふ菊人形まつり」は74回目を迎え、さらに越前市制20周年を記念し、例年に増して展示やイベントが開催されていました。

武生中央公園に到着し、菊人形の園内ガイドさんより、菊花の栽培や菊農家さんの仕事について説明がありました。実際に栽培や菊人形を製作されている過程を映した動画も併せて使用され、華やかな催しの裏側で、多くの栽培者一人ひとりの手作業であることを知り、留学生さんも驚きでした。
留学生:グエンさん
その大きさにとても驚きました。花の種類や形もさまざまで、とても華やかでした。特に、菊の花を人形に飾り付ける作業を見ると、スタッフの方々が色の組み合わせや咲く時期などをよく考えて時間をかけて作っていることが伝わってきました。

※ガイドさんから説明を受ける様子。菊人形を裏側から見てみると、1本の菊の根から水あげされています。
その後、越前和紙ワークショップのブースで、越前和紙を使った制作体験しました。越前和紙は約1500年の歴史があるとされ、国の重要無形文化財に指定されており、高い品質を誇る福井県の伝統工芸です。近年ではその高い強度と保存性が注目され、多くのアーティストとのコラボレーションも実現しています。
そのような越前和紙を使って、1人ひとつずつ、思い思いの作品を作っていただきました。体験の最後には、ブースを訪れた人々のメッセージでつくられた大きな菊の花に、体験の感想や母国への想いを残しました。また、他の人の書いたメッセージも読み、70年以上続くたけふ菊人形への地元の方々の想いに触れることもできました。

昼食は、フードコートにて、福井名物の「越前そば」や「ソースカツ丼」が並び、また、当日は福井県のブランド蟹である越前ガニの漁の解禁直後で、直売コーナーも開催されていました。メリーゴーランドやさまざまな遊具もある公園内を見学しました。

(2)坂井市三國湊
~三國の刺し子・福井の繊維文化をつむぐ~
越前市から車で1時間、坂井市三国町の「雄島」へ向かいます。雄島は、東尋坊の沖合にある無人島で、雄島橋が架かるまで長く聖域として扱われ、人の立ち入りが許されていませんでした。雄島橋を渡った先には県の重要文化財に指定されている「大湊神社」が鎮座しています。地元の人々から「神の島」と呼ばれ、信仰を集める雄島です。
雄島へかかる朱塗りの橋の先に神秘的な雰囲気を感じることができます。

その後、車で5分ほどの北陸地域の観光名所でもある「東尋坊」を訪れます。
世界的にも珍しい1㎞続く柱状節理は、「世界三大絶勝」、「国の天然記念物」、「日本の地質百選」にも選ばれています。お土産や海鮮グルメのお店が並ぶ通りを抜け、美しい岩場の景色を堪能しました。
遊覧船に乗り、海上から断崖絶壁を見上げることもできます。
周辺には人気スポットの「IWABA CAFÉ(いわばカフェ)」や、東尋坊限定商品を取り扱うお土産店も立ち並びます。

東尋坊から車で約10分ほど、三國湊の町へ向かいます。この地域は、江戸時代からの町並みが残り、港町文化、刺し子、和裁などの手仕事文化、この地域の周辺は、世界レベルの繊維工場を有しています。
先に訪れたのは、「近藤古美術店」。江戸時代に使われた古道具や陶器等、貴重な骨董品が多く展示されています。
店主の近藤克子さんは、江戸時代の交易で北前船に実際に積まれていた金庫や、手作業で3年もの歳月をかけて仕立てられた着物など、先人の知恵が詰まった圧巻の品々を紹介し、それらが当時どのように使われていたのかを丁寧に説明してくださいました。
お店の奥にある美しい中庭には日本庭園独特の仕掛けである水琴窟(すいきんくつ)があり、留学生さんは、その不思議な音色を初めて体験しました。最後には、お土産に日本の盃をいただきました。

近藤古美術から徒歩5分ほどの場所にある 「くらしつむぐあとりえ」に向かいました。ここでは、江戸時代には糸から製品までの一貫生産体制が確立されていた繊維産業を、嘉村亜紀子さんが取り組まれています。
繭の柄の入った青い暖簾の掛かる入り口を入り、奥の部屋では、実際に手作業で繭から糸を紡ぐ様子を見せていただきました。わずかな数ミリ単位の違いで出来上がる糸の風合いが変わるため、ゆっくりと作業される様子が印象的です。身近な自然の素材を使って日本独自の色に染められた糸や美しい織物に触れることができました。


古い建物が保存されている三國湊。旧森田銀行や2024年にオープンした町に点在する9棟の古い町家をリノベーションした宿泊施設「オーベルジュほまち三國湊」の仕組みやフロントを見学しました。留学生の皆さんは、授業の中で、アルベルゴ・ディフーゾ(分散型の宿)を学び、現地を見たことは初めてと感想をいただきました。
留学生:テッ ターさん
三國湊の町を歩いて、観光まちづくりの大切さを感じました。昔ながらの建物や伝統が残っていて、とても魅力的でした。特にホテルが印象的で、古い建物を壊さずに修復し、観光と結びつけて新しい価値を生み出している点が素晴らしいと思いました。伝統と現代が調和した町づくりに感動しました。

ツアーの最後は、地元の方々に愛されているカフェ「三國湊座」で、日本の伝統的な刺繍である刺し子を教わります。刺し子が施され、実際に江戸時代に使われていた農民、火消し、海女等の衣装が並びました。刺し子は、ただデザインを楽しむだけでなく、衣服の補修、補強、保温性を高めるため、そして着る人が誰なのかを示すために施され、さらにいろいろな模様があり、その一つひとつに込められた願いがあると知りました。
留学生:ジャスミンさん
刺し子体験は今日一番のお気に入りの活動でした。初めての裁縫でしたが、優しく丁寧に教えてくれる先生のおかげで、問題なく楽しめました。もう少し時間があれば、ユニークなデザインにも挑戦したかったですが、とても楽しい体験でした!

ツアーを終えて
今回、大阪観光大学の留学生の皆さんにご参加いただき、福井県の魅力をお伝えすることができ、様々な視点や感想をいただきました。
古い時代から続く技術や工芸、空間や建物などなどが、現在も地元の人々によって大切に守られ、引き継がれていることの大切さ、人の温かさを感じていただくと共にインバウンドを受け入れる地域としての新たな発想や価値観を変える必要性を再認識することができました。
今後も引き続き、福井県の観光コンテンツを磨きあげ、国内外へ魅力の発信に取り組んでいきたいと思います。

最後に留学生の皆さんにツアーのご感想を伺いました。
・「『おもてなし』を感じた。接した人皆さんが優しかった。将来は自国でも日本と同じくらいのレベルの接客を実現したい。」
・「三國には何度か来たことがあったが、どの季節に来ても美しい。たくさんの有名な祭りもある。また来たいと思う。」
・「古民家をホテルとして再生していることが、いいアイデアだと思った。」
・「刺し子がおもしろかった。思ったより難しく時間がかかって、昔の人はすごいと思った。」
・「古い街並みを残しながら、新しい仕組みができつつあるのがとても面白かった。」
・「『くらしつむぐあとりえ』での糸紡ぎの様子や織物の見学は、アジアだけでなく、特に欧米の人たちにも興味をもってもらえるのではないかと感じた。」
