株式会社地域創生Coデザイン研究所ポリフォニックパートナーの木村篤信が、独立行政法人科学技術振興機構(JST) 社会技術研究開発センター(RISTEX) ケアが根づく社会システム ~少子高齢化社会を生き抜くために 自然に支え合う「ケア」が行きわたった社会の構築を目指して~ 領域アドバイザーに就任いたしますので、お知らせいたします。
令和7年には団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者になり、その数は全人口の約18パーセントに上ります。また、2030年代には若年人口の急減が見込まれており、日本においては人口減少・少子高齢化が加速しています。これらによる社会問題に対して、独立行政法人科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)ではより広い観点から見直しを図るための取り組みを進める必要があると考え、人びとの生活の基盤として、互いの暮らしを支え合える自発的・機能的なコミュニティーや、自身の外にある環境(自然環境を含む)と互恵的に作用できるインフラの実現により、平時のみならず災害時にもしなやかに生き抜くことができる社会の構築を目指す新規研究開発領域「ケアが根づく社会システム」を設定しました。
本領域では「人は『ケアし、ケアされる』弱い存在である」という相互依存的人間観に基づき、介護・育児などに限らず、自然に「他者や環境を気にかける」ことから生まれる行為や、その行為が立ち現れ得る状態を広く「ケア」と捉え、その価値を科学的に見いだし、ケアを社会の現場で実践する活動を対象とした、異分野連携・総合知によらなければ解決し難い研究開発プロジェクトを支援します。
また、本領域で求める研究開発プロジェクトは、単一の研究分野にとどまる体制、あるいは、各分野の研究者が分業して取り組む体制では推進が困難であるため、分野や立場の異なる方々が協業して取り組む体制で実施することを必須要件とします。これまで顧みられることが少なかったケアの当事者(特にケアの受け手)や、ケアに関わるそのほかのステークホルダー(政策立案者・実践者・運営団体・実践活動に関心を有する一般市民など)が研究開発に携わるプロセス(参加型デザイン)を含めた研究開発を実施していただくことも求めます。
一方、株式会社地域創生Coデザイン研究所は、現代社会の社会システムの限界が多様な社会課題を生み出し、また、地域の持続可能性が失われつつあるという課題意識にもとづき、それを乗り越える手法として共創・Coデザイン・リビングラボのアプローチ※1を主題とし、持続可能な地域社会への変革に向けた実践や方法論の研究、人材育成、仕組みづくりに取り組んできました。
その中でも、弊社研究員である木村篤信は、日本の中でも早くからリビングラボの調査・研究・実践に取り組んできた人物であり、サービス学会特集号掲載論文「社会課題解決に向けたリビングラボの効果と課題」や国立国会図書館調査資料「リビングラボの可能性と日本における構造的課題」は、国内のリビングラボ研究で多数引用されている論文の一つです。
また、日本全国のリビングラボの実践、研究についての対話が行われる全国リビングラボネットワーク会議の主催や、リビングラボ実践者・研究者が毎月集う日本リビングラボネットワークの運営も行っています。
RISTEXの新規研究開発領域「ケアが根づく社会システム」においては、現代社会の人びとの生活の基盤を広い観点から見直しを図るための取り組みであることから、産官学民の多様な立ち位置や文理を問わない学際的な視点からの視座とともに、それらの観点に基づきながらも学術的・研究的視点だけでなく、実際に地域の現場におけるリアリティを捉えた視点でのアドバイスが必要です。そこで、国内外の多数の地域におけるリビングラボプロジェクト・リビングラボ団体に関わり、地域の立ち位置からコミュニティ・テクノロジー・ビジネス・政策などについて実践経験のある弊所木村篤信が、領域アドバイザーとして委嘱を受けることになりました。
また、今回の募集ではRISTEXの事業において初めて、政策立案者・実践者・運営団体・実践活動に関心を有する一般市民などの多様なステークホルダーが研究開発に携わる参加型デザインのプロセスが明記されています。この観点からも、リビングラボ、参加型デザインの実践や研究の知見が期待されています。
なお本領域の領域統括、領域アドバイザーは、以下の通りです。
- ・領域総括
- 西村ユミ 東京都立大学 健康福祉学部 教授
- ・領域アドバイザー 一覧 (2025年4月23日現在)
- 岡田美智男 筑紫女学園大学 現代社会学部 教授/dd>
- 岡部美香 大阪大学 大学院人間科学研究科 教授/dd>
- 木多道宏 大阪大学 大学院工学研究科 教授/dd>
- 桐山伸也 静岡大学 学術院情報学領域 教授/dd>
- 榊原哲也 東京女子大学 現代教養学部 教授/dd>
- 千村浩 代官山やまびこクリニック 院長/dd>
- 細馬宏通 早稲田大学 文学学術院 教授/dd>
- 岡部美香 大阪大学 大学院人間科学研究科 教授/dd>
<本事業の詳細・申込>
事業主体:国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)
事業名:ケアが根づく社会システム ~少子高齢化社会を生き抜くために 自然に支え合う「ケア」が行きわたった社会の構築を目指して~
■プログラム概要
・詳細リンク:https://www.jst.go.jp/ristex/proposal/proposal_2025.html
・募集期間:令和7年4月9日(水)~6月4日(水)正午
・研究開発期間・規模:
研究開発期間:最長4年6ヵ月
研究開発費:1年当たり上限2,300万円程度(直接経費)
・研究開発対象:
本領域では、「ケアとその価値の可視化および実践」を対象とします。「可視化」とは、ケアがなされている現場を分析することにより、ケアとその価値を見えるようにする研究開発に限りません。歴史・社会・芸術・文化・教育などの観点から、人間にとってのケアの価値を再定義しながらケアのあるべき姿を解明する研究開発や、そのようなケアが根づいた社会システムの概念を構築する研究開発も「可視化」の対象に含めます。また「実践」とは、見いだされたケアやその価値が人びとに浸透していくためのモデルなどを構築し、それを実社会の現場に導入し、検証・改善を行うことを指します
・お問合せ先
長田直樹(ナガタ ナオキ)
科学技術振興機構 社会技術研究開発センター 企画運営室
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-0133
Fax:03-5214-0140
E-mail:boshu-care[at]jst.go.jp
※1: リビングラボとは、サービスの利用者である生活者と、サービスの提供者である企業・行政などが共にサービスを創る(共創する)方法論です。(引用:木村,(2021)「高齢者を支える技術と社会的課題」第5章 リビングラボの可能性と日本における構造的課題、(調査資料2020-6)国立国会図書館調査および立法考査局)
※2:社会技術とは「自然科学と人文・社会科学の複数領域の知見を統合して新たな社会システムを構築していくための技術」であり、社会を直接の対象とし、社会において現在存在しあるいは将来起きることが予想される問題の解決を目指す技術」です。(引用:社会技術研究開発センター(RISTEX)(2017)科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 科学技術社会連携委員会第1回資料)
大阪大学、奈良先端科学技術大学院大学を修了後、NTT研究所に入社。企業内に閉じられたデザイン研究・実践の限界を感じ、社会に開かれたソーシャルデザインの研究・実践プロジェクトを立ち上げる。福岡県大牟田市、奈良県奈良市との共同実験プロジェクトを協働する中で、NTT西日本と理念を共有し、2021年、NTT西日本グループの子会社である地域創生Coデザイン研究所の設立に関与し、参画。現職。博士(工学)。デザインイノベーションコンソーシアム フェロー。東京理科大学 客員准教授。
主としてHCI、CSCW、UXデザイン、リビングラボの研究開発に従事。デザイン研究のチームを牽引し、企業のサービスデザインプロジェクト、地域のソーシャルデザインプロジェクトを多数実践し、コンサルティングや教育活動も行っている。現在は、「人々が主体的に共創できる社会」という地域創生Coデザイン研究所のビジョンに向けて、社会課題解決やウェルビーイング実現に向けたデザイン方法論やデザイン人材教育方法論などの研究・実践を主題にし、大牟田市などの地域パートナーともに、まちづくり、地域経営、サービスデザイン、社会システムデザインなどの文脈で新しいソーシャルデザインのあり方を探求中。2023年には、セクターを超えた共創であるリビングラボを普及展開に取り組むために、日本リビングラボネットワーク (Japanese Network of Living Labs)を設立し、代表理事に就任。著書に「はじめてのリビングラボ」(NTT出版|2025年)、「2030年の情報通信技術生活者の未来像」(NTT出版|2015年)等。