Column 静岡のわさび産業を通した地域活性化のプロジェクトに関して、地域のみなさまにインタビューを行いました

GX(グリーントランスフォーメーション)に 関するレポートです。

静岡のわさび産業を通した地域活性化のプロジェクトに関して、地域のみなさまにインタビューを行いました

静岡での地域活性化の取り組み

NTT西日本静岡支店をはじめとするNTT西日本グループでは、静岡県をフィールドとして伝統産業であるわさび産業の持続可能な発展による地域活性化をめざしています。

今回、地域創生Coデザイン研究所(以下Coデザ)では、NTT西日本静岡支店とともに、静岡県内のわさび加工品製造販売会社である株式会社田丸屋本店(代表取締役:望月啓行、以下田丸屋本店)の望月啓行さま、および静岡県を中心に展開する農業生産法人の株式会社鈴生(代表取締役:鈴木貴博、以下鈴生)の鈴木貴博さま、そしてそのグループ会社であり、農福連携*を進めるGrand Farm株式会社(代表取締役:杉山明美、以下Grand Farm)の杉山明美さまにインタビューを行いました。

*「農福連携」:農業と福祉の連携

インタビュー内容(以下)

①田丸屋本店

(Coデザ)貴社ではわさび関連商品の製造・販売をされておりますが、新型コロナウイルスが経営に与える影響はありましたか?

(望月さま)これまで「わさび漬け」を販売してきましたが、団体の観光客が主な購入層でした。元々、そこに危機感はありましたが、コロナをきっかけに購入層も個人に変わりつつあり、業務の転換や縮小も図ってきました。観光の物産品はその地の窓口となるので、商品力をつける必要があります。わさびは静岡が発祥の地であり、最高のコンテンツであり、そこをどう広げるか考えています。

(Coデザ)わさびは静岡を代表するコンテンツですね。やはり商品開発に力を入れていますか?

(望月さま)田丸屋では、社長はもちろん若手社員も開発に携わります。近年の傾向では、商品の用途を限定した方が商品力は強くなります。もちろん、これまで関わってきた栽培農家も大切にしながら、新たなマーケットを開拓していきたいと思っています。

(Coデザ)ありがとうございます。わさび関連商品の製造や販売のみならず、地域としても地元への貢献に携わっているように拝見し、トップ自ら実践しているように見えますが、どのようにお考えでしょうか。

(望月さま)地元の人がリスクを背負ってでも面白いことを実践していくのが大事だと考えています。若者が静岡に居続けたい、戻ってきたいと思う街にしたいと思っています。

(Coデザ)若手やこれから起業する人をお手伝いされているとお伺いしましたが、ポイントはありますか?

(望月さま)原石をどう育てるかがポイントとなります。マネタイズは最初に指摘することはせずに、価値をどう広げるかが大事でしょう。

(Coデザ)ありがとうございました。田丸屋本店の社長として、また、静岡という地域全体の地域活性化の推進役としての2つのお顔を持ち、地域活性化に邁進する点に非常に感銘を受けました。

 

②鈴生

(Coデザ)貴社では幅広く事業を手掛けているとお聞きしました。事業内容を教えてください。

(鈴木さま)レタス等の農作物の生産の他、輸送や農福連携等幅広く手掛けています。2014年頃から子会社を複数作り、これまで外部で行っていた機能を内製化してきました。ビジネスとしては生産者や消費者からお金を頂くのではなく、バリューチェーンの中でどうお金を生み、生産者にどう還元するか考えています。農家がしっかりお金を稼ぐ仕組みを作ることを重視しています。特許取得によるライセンスビジネスなどサブスクモデル農業もできればと考えています。

(Coデザ)幅広く取り組まれていますね。農業を通した環境保全にも興味があるように見えますが、どのようなお考えでしょうか。

(鈴木さま)温室効果ガス削減の取り組みとして、バイオ炭への取り組みもめざしています。静岡で発生した産業廃棄物を炭化してクレジット発行できないかと考えています。

(Coデザ)このような考えに至った経緯として、どのような経歴を歩まれているのでしょうか。農業はどのようなところの難しさがあるのでしょうか。

(鈴木さま)学校を出てから、修行を経て、家業の農家を継ぎました。色んなことがありましたが、会社が大きくなってきました。農業は変動指数が多いので、気象や環境等さまざまな変動要素があり、大変です。

(Coデザ)さまざまなご苦労を経験されて、現在に至るのですね。今後の取り組みを教えてください。

(鈴木さま)養蚕や農作物のトレースの仕組みにも注目しています。農作物の生産時の栽培履歴や物流の状況を一元管理できるような仕組みができないか、それをNTT西日本グループと一緒にできないかと考えています。

(Coデザ)ありがとうございました。敏感なビジネス感覚をお持ちで、農家がしっかりお金を稼ぐという仕組みづくりを志向される姿が印象的でした。

 

③Grand Farm

(Coデザ)Grand Farmさまの取り組みを教えてください。

(杉山さま)②の鈴生のグループ会社のTEN Green Factoryの水耕栽培ハウスで農業に特化した福祉事業所「すずなりカレッジ磐田校」就労継続支援A型B型事業所を運営し、農福連携事業を推進しております。障がいのある方とともにサラダほうれん草の定植・播種等の作業をしています。現在、約10名の方が作業に従事しています。

(Coデザ)Grand Farmさまのめざすところを教えてください。

(杉山さま)食を育て、人を育み、地域を創ることで地域に貢献していきたいと考えております。障がいがあっても利益を生む農業の仕組みを構築することが担い手不足にならない持続可能な農業にしていけると考えています。更には、障がい者だけでなく、ひきこもりの方や生活困窮者の方など社会参画に困難を抱えている方も農業に携わり地域で暮らしていく「ソーシャルファーム」の実現をめざします。

(Coデザ)農業と福祉の持つ可能性をお聞かせください。

(杉山さま)農業は人材不足であり、そこに福祉で雇用を確保することでうまくマッチングできればと考えています。その中で農業は産業別の中で精神障がいの労災請求件数が一番少なく、農作業により体を動かし、土や作物、水に触れることで、精神的にもさまざまなメリットがあるのではないかと思っています。

(Coデザ)障がい者雇用とともに企業の健康経営等にも着目されていますか。

(杉山さま)企業内でもうつ病などで休職している社員のリワーク支援に活用するほか、企業の健康経営や健康投資の観点でも農業の可能性は広がると考えています。

(Coデザ)労働力不足の解消のみならず、福祉分野にも広がっていく農業の持つ大きな可能性を改めて感じることができました。ありがとうございました。

この記事を書いた担当者

垣内 洋次郎

カキウチ ヨウジロウ

GX/まちづくりチーム
研究主任 リードCoクリエイター

今回のインタビューでは、地域を盛り上げたい考えや農業に対する熱い思いを伺うことができました。バイタリティあふれる方々へのインタビューを通して、農業を通した地域活性化のヒントを頂き、大きな可能性を感じました。これからも西日本のさまざまな地域で、一次産業を起点として、地域の皆さまとともに地域を元気にできるような活動を行っていきたいと思います。
インタビューにご協力いただきました皆さま、誠にありがとうございました!